わが家の末っ子、陽(はる)。
はるの片耳の聴覚が奪われ、「耳が痛い」と訴え、突然、聴覚過敏になってから。
私たちは、どんなものを試し、どこで少し楽になり、何を足したり引いたりしたのか。
その過程を、できるだけ正確に残しておこうと思って書いています。
毎日毎日、暗闇の中を手探りで進んできたあの時期を、やっと振り返って言葉にできるようになりました。
同じように、突然、音を怖がるようになった子どもを前にして、何を選べばいいのか分からず戸惑っている方の参考になればと思っています。
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- 1.1 つらかったのは、給食の時間
- 1.2 わが家で実際に試したもの一覧
- 1.2.1 ① 自宅にあった普通の耳栓
- 1.2.2 ② 子ども用ヘッドホン(オンライン英語用)
- 1.2.3 ③ クマの耳栓+②の子ども用ヘッドホン
- 1.2.4 ④ SONY WH-CH520(お姉ちゃんのもの)
- 1.2.5 ⑤ Bose Noise Cancelling Headphones 700(パパのもの)
- 1.2.6 ⑥ Apple AirPods Pro 3
- 1.2.7 ⑦ SONY WH-1000XM5(お兄ちゃんのもの)
- 1.2.8 ⑧ SONY WH-1000XM4(第4世代)
- 1.2.9 ⑨ SONY WH-1000XM3(第3世代)
- 1.2.10 ⑩ 子ども用イヤーマフ
- 1.2.11 ⑪ 子ども用ノイズキャンセルヘッドホン
- 1.3 聴覚過敏のある子どもの感覚で見た比較表
- 1.4 最終的には、WH-1000XM3がちょうどよかった
- 1.5 実は、メルカリで見つけました
- 1.6 電気店は、音の嵐だった
- 1.7 重さは気にしていなかった
- 1.8 ヘッドホンだけではなく、理解してもらう工夫もした
- 2 「お母さん。わからなくてもいいんだよ」——お守りの猫と多様性のはなし
最初の頃は、「痛い、痛い」と言っていた
最初の頃のはるは、「痛い、痛い」と言いながら、音から逃げるように、自分の世界へ閉じこもるように過ごしていました。
手元にあった子ども用のヘッドホンを、一日中つけていた時期もあります。オンライン英語で使っていた、ごく普通のヘッドホンです。
けれど、それだけでは足りませんでした。
耳を押さえるように、さらに上から手で覆い、少しでも音を遮ろうとしていました。季節は夏へ向かっている頃でしたが、暑さよりも、音の痛みから身を守ることのほうが切実だったのだと思います。
最初に試した耳栓は合わなかった
最初にはるが試したのは、ひと袋にいくつも入っているような、ふわふわの耳栓でした。
「耳栓したら嫌な音がなくなるかもしれない」
本人もそう言って試しましたが、がっかりした様子でこう言いました。
「なんか気持ち悪い」
耳に入れる感覚そのものが苦手だったのだと思います。
突然の不調で、不快で、不安で、どうしたらいいか分からない。そんな状態でもあったのだと思います。
クマの耳栓は、心を少し助けてくれた

私は、はると一緒にインターネットで耳栓を探しました。
「僕、これつけてみたい」
そう言って選んだのが、クマのかたちをした耳栓でした。
はるはクマが好きで、その見た目に少し気持ちが上がったのを覚えています。
「かわいいね」
そう言いながら、ほかの耳栓より抵抗が少なかった。
音をしっかり遮れるわけではありませんでしたが、「好きなものを身につけている」という安心感は確かにあったのだと思います。
けれど、しばらくすると、クマの耳栓をした上から、自分のヘッドホンを重ねるようになりました。
そしてある日、不安そうな顔でこう言いました。
「これでも、効かない音があるんだよ」
その言葉を聞いたとき、胸の奥がひやっとしました。
イヤーマフという選択肢もありました
「イヤーマフはどうだったの?」と思われる方もいるかもしれません。
実際、ホームセンターへ見に行ったこともありました。けれど、はるは「嫌だ」と言いました。
ネットで子ども用のイヤーマフを見つけて見せてみたこともありますが、それも首を横に振りました。
もしかすると、いつも使い慣れている形や、知っている機能のあるものの方が安心できたのかもしれません。
あるいは、「音を遮るためだけの道具」ではなく、自分はいつか治る、みんなと同じように戻れる――そんな希望も込めて、“普通のヘッドホン”を選びたかったのかもしれません。
たぶん、その両方だったのだと思います。
その中で、はるが受け入れたのが、いつも見慣れていたヘッドホンでした。
つらかったのは、給食の時間
教室には、はるにとって耐えがたい音がいくつも重なっていました。
- 机を動かす音
- 食器が擦れ合う音
- 金属が触れた高い音
- 人の声
- 椅子を引く音
その頃、はるはクラスで給食を食べることができませんでした。
「うるさい」ではなく、「痛い」。
音が身体に直接触れてくる感覚だったのだと思います。
わが家で実際に試したもの一覧
困っている方の参考になればと思い、実際に試したものを順番に載せます。
① 自宅にあった普通の耳栓
→ 耳の中に入れる感覚が苦手で合わず。
最初に手に取ったのは、自宅にあった普通の耳栓でした。 突然始まった「耳が痛い」に、親としてできることを必死に探していたのだと思います。 ふわふわした素材が安心感を与えるのでは?というこちらの考えとは裏腹に はるにはしっくりこなかったようで、そこから「早く、どうにかしてこの苦痛から守ってあげたい」という 思いの中で本当の試行錯誤が始まりました。
② 子ども用ヘッドホン(オンライン英語用)
→ 使い慣れているため、少し安心感もあったし、耳が覆われるため守られている感じはあった。 →ただ、学校の強い音には足りなかった。
③ クマの耳栓+②の子ども用ヘッドホン
はるが選んだのは、クマのかたちをした耳栓でした。
「これ、つけてみたい」
そう言って選んだのが、クマの耳栓です。
はるはクマが好きで、その見た目に少し気持ちが上がったのを覚えています。
つらい時期には、こういう小さな可愛いが心を助けてくれることもあります。
→ 気持ちは上がった。心の安心にはつながった。
④ SONY WH-CH520(お姉ちゃんのもの)
→ ノイズキャンセリング機能はありませんでした。 → 軽くて使いやすい。
→ はるは、痛みに関して「自分の子ども用ヘッドホンとあまり変わらない」と感じていた。
⑤ Bose Noise Cancelling Headphones 700(パパのもの)
→ 空間ごと静かになるような感覚がありました。明らかに安心感があった。音との距離ができた。 → 私が使っても、静粛の中にいるような深い静けさでした。
→ 静けさを重視したい方には魅力的なモデルです。が、正直、子供に持たせるには大変高価でした。今でもお高いと思われます。
⑥ Apple AirPods Pro 3
→ 性能は高い。
→ ただ、はるは「耳が守られていない感じが怖い」と話していた。 → Apple製品との相性が良く、持ち運びしやすいモデルです。
→ 通学や普段使いには便利だと思います。
→ ヘッドホンより軽さを重視したい方には候補になります。
⑦ SONY WH-1000XM5(お兄ちゃんのもの)
→ 高性能で安心感がありました。
→ はるも、設定を変えれば使えそうだと話していました。
→ ただ、長く借りるのは申し訳ない。学校へ持って行くには高価すぎる。そんなことも、はるなりに考えていたように思います。
⑧ SONY WH-1000XM4(第4世代)
→ 家電量販店で実際に確認したモデルです。
→ XM5ほどの閉塞感は少なく、比較的選びやすい印象でした。
→ 新しめのモデルを安心して選びたい方には、現実的な候補になると思います。
⑨ SONY WH-1000XM3(第3世代)
→ 最終的には、はるが使うことになったモデルです。
→ 現在は新品在庫が少なく、中古中心です。
→ はるにとっては安心感がありました。
→ はるにはXM4でもよかったのだと思います。けれど、XM3よりXM4の方が高かったので、最終的には3を選びました。子どもなりに、ちゃんと現実を見ていたのかもしれません。
⑩ 子ども用イヤーマフ
「イヤーマフはどうだったの?」と思われる方もいるかもしれません。
実際、ホームセンターへ見に行ったこともありました。けれど、はるは「嫌だ」と言いました。
ネットで子ども用のイヤーマフを見つけて見せてみたこともありますが、それも首を横に振りました。
もしかすると、いつも使い慣れている形や、知っている機能のあるものの方が安心できたのかもしれません。
あるいは、「音を遮るためだけの道具」ではなく、自分はいつか治る、みんなと同じように戻れる――そんな希望も込めて、“普通のヘッドホン”を選びたかったのかもしれません。
たぶん、その両方だったのだと思います。
その中で、はるが受け入れたのが、いつも見慣れていたヘッドホンでした。
ただ、大きな病院の小児科や耳鼻科ではイヤーマフを使っているお子さんをよく見かけました。
音への負担が強い時期に、機能的にも値段的にも、まず試しやすい選択肢だと思います。
見た目やつけ心地で受け入れやすさが変わることもあるので、本人が嫌がらない形を選ぶことも大切なのだと思います。
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⑪ 子ども用ノイズキャンセルヘッドホン
はるは小柄でしたし、サイズ面でもその方が自然に感じたからです。
実際に子ども用ヘッドホンも検討しました。以下は、実際にはるに提案した子供用のノイズキャンセルヘッドホンです。
ただ、大人用ヘッドホンも調節ができ、十分使えることが分かりました。
また、ネット購入では実際につけて比べられないことも悩ましい点でした。
あれこれ迷いましたが、最終的に決めたのは、はる本人でした。
親が選ぶより、本人が「これなら大丈夫」と思えたことが、いちばん大きかったのだと思います。
聴覚過敏のある子どもの感覚で見た比較表
※この比較は、一般的な性能やスペック評価ではなく、聴覚過敏のある子ども本人(はる)が感じた使いやすさにもとづく個人の記録です。同じ症状でも感じ方には個人差があります。
| 商品名 | 安心感 | 付け心地 | 音のつらさ軽減 | 価格 | はるの評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自宅にあった普通の耳栓 | △ | △ | △ | ◎ | 最初に試した |
| クマの耳栓 | ○ | ○ | △ | ◎ | 気持ちが少し上がった |
| 子ども用イヤーマフ | ー | ー | ー | ◎ | 選択肢として有力 |
| 子ども用ヘッドホン | △ | ○ | △ | ◎ | 候補だった |
| SONY CH520(お姉ちゃん) | △ | ○ | △ | ◎ | 普段使い向き |
| Apple AirPods Pro 3 | △ | ○ | ○ | △ | 軽くて便利 |
| BOSE NC700 | ◎ | ○ | ◎ | △ | 静寂感が強い |
| SONY WH-1000XM5 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | とても良いが高価 |
| SONY WH-1000XM4 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | 十分候補だった |
| SONY WH-1000XM3 | ◎ | ◎ | ◎ | ○ | 最終的に選んだ |
※わが家では、最高性能よりも「毎日使えること」「本人が安心できること」を大切にしました。
最終的には、WH-1000XM3がちょうどよかった
お兄ちゃんが使っていたのは、より新しい WH-1000XM5(第5世代) でした。
一般的には新しいモデルの方が高性能です。
けれど、はるには WH-1000XM3(第3世代) のほうが、ちょうど良かったのだと思います。
音を消しすぎず、でもしっかり守ってくれる。
外の音が全く聞こえなくなると不安もあります。
遮断性能の高さより、“安心できる聞こえ方”の方が大切なこともありました。
その点で、はるにはXM3が安心と安全のバランスが良かったのだと思います。
実は、メルカリで見つけました
XM3も新品では簡単に手が出せる価格ではありませんでした。
そこで探していたところ、状態の良いものがメルカリで見つかりました。
結果として、わが家ではそれがとても良い選択になりました。
高性能なヘッドホンは、新品にこだわらなくても、状態の良いものを選べば選択肢が広がると感じました。
電気店は、音の嵐だった
少し安くて良いものを探そうと、品揃えの良い電気店にも行きました。
けれど、そこは、はるにとって音の嵐でした。「痛すぎる…」と。
お兄ちゃんのSONYのノイズキャンセリングヘッドホンを借りて行って、本当に助かりました。
比較対象のヘッドホンを持参したことで痛みをカバーしながら短時間に、そして、スムーズに付け心地や音の感覚、自分の好みをチェックすることができたからです。
店員さんに事情を話すと、近いSONYのモデルを世代順に出してくださり、ようやく自分のヘッドホンにたどり着くことができました。
重さは気にしていなかった
よく聞かれるのが、「重くなかったの?」という点です。
でも、はるは重さについて一度も不満を言いませんでした。
それよりも、
- 痛みがあるかどうか
- 耳全体が覆われているか
- 守られている感じがあるか
その方が大事だったのだと思います。
ただ、夏に向かう時期だったので、かなり暑かったと思います。よく汗をかいていました。
ヘッドホンだけではなく、理解してもらう工夫もした

ヘッドホンで音を和らげることも大切でしたが、
「周囲に理解してもらえること」も、同じくらい大事だったのだと思います。
同じ時期に、聴覚過敏であることが周囲に伝わるシールもヘッドホンに貼っていました。
Creemaで出会った、MikanJamさん という作家さんの、猫のイラストのやさしいシールでした。
見た目では分かりにくい困りごとを、言葉の代わりにそっと伝えてくれる存在で、私たち親子にとって大きな助けになりました。
バッグや洋服につけられる缶バッジも、お揃いで作っていただきました。
作家さんとのやり取りにも、とても救われました。
理解できなくても、寄り添おうとしてくれる人の存在に、何度も救われました。
現在はショップをお休みされているようですが、同じように助けられた方はたくさんいらっしゃるのではないかと思います。
その頃の親としての気持ちは、以前noteにも綴りました。
「お母さん。わからなくてもいいんだよ」——お守りの猫と多様性のはなし
https://note.com/daigonami_24/n/nd62a0c392725
今でも、私にとって大切な一篇です。
最後に
この記録から伝えたいのは、
「これを買えば解決する」
という答えではありません。
- 心が先に助かることもある
- それでも身体は守られないことがある
- 安心には段階がある
ということです。
もし今、
「何を選べばいいかわからない」
そんな場所にいる方がいたら、いきなり正解を探さなくていい。
家にあるものから、一つずつ、子どもの反応を見ながら試していく。
それも、ちゃんとした一歩だと思います。
この記事には書ききれなかった、はるのそれまでの日々があります。
その記録を、2026年6月、Kindleで届ける予定です。
※本記事は、現在の医学的知見と専門家の説明、そして私がジェンダーを基盤に多領域を横断して学んできた理解にもとづいています。研究は日々更新されるため、新しい見解が示される可能性があります。