子どもが「耳が痛い」と言った日|生活音はどれくらいうるさい?dBでわかる聴覚過敏の世界

「耳が痛い。」「音が痛い。」「片方だけもわーってなって聞こえない。」

はるがそう言った日、私は、あんなに大変なことになってしまうなんて思いもしませんでした。

聞こえないというので、耳の中を見てあげました。

中耳炎だろうかとも思いましたが、熱があるわけでもなく。

そんなに緊急を要する感じも受けなかったので一晩様子を見てみれば、治るだろう。

そのくらいに考えていました。

ただ、音で痛いなんて、そんなことがあるのだろうか。そこだけは、何か引っ掛かっていました。

翌日、辛そうな様子も見せなかったので登校させました。

しかし、それらの症状は、学校へ行ってみると一気に強くなりました。

けれど今ならわかります。

あの子にとって教室は、私たち大人が思うより、ずっと激しい場所だったのだと。

この記事でわかること

  • 子どもが耳が痛いと言う理由
  • 学校や生活音は何dBくらいなのか
  • 聴覚過敏の子どもに起こること
  • 親と学校ができる支援

生活音はどれくらいうるさい?環境省データで見る目安

私たちが普段何気なく聞いている音にも、それぞれ大きさがあります。

環境省などの資料では、一般住宅地の騒音環境基準は、

・昼間(6時〜22時):55dB以下
・夜間(22時〜6時):45dB以下

とされています。

一方、日常生活の音には次のようなものがあります。

30dB:図書館・静かな住宅地
50dB:換気扇・家庭用エアコン
60dB:日常会話・洗濯機
70dB:騒がしい街頭・セミの鳴き声
80dB:地下鉄車内・ピアノ
90dB:犬の鳴き声・カラオケ店内

こうして見ると、私たちが普通だと思っている生活音も、意外と大きいことがわかります。

大人には平気な音でも、敏感な子どもには強い刺激になることがあります。

教室の音は、実はかなり大きい

私たちは毎日聞いているので慣れていますが、学校にはたくさんの音があります。

教室のざわざわ、給食の食器音、椅子を引く音、体育館の反響音。

大人には「少しうるさい」で済む音でも、敏感な子には強い刺激になることがあります。

音の種類 dB 大人には はるには
図書館 40 静か 落ち着く
普通の会話 60 日常の音 疲れる日もある
教室のざわざわ 70〜80 少しうるさい 緊張する
給食の食器音 80前後 にぎやか 耳をふさぎたい
雨音 50〜70 雨の音 頭に響く
体育館の反響音 85〜90 かなり大きい 強いストレス
椅子を引く音 瞬間音 嫌な音 刺さるように痛い
サイレン 90〜120 大きい音 強い痛み・恐怖

※感じ方には個人差があります。

はるが苦手だった音

  • 雨が地面や傘を打つ音
  • 自転車で走った時の風切り音
  • 救急車、消防車、パトカーのサイレン
  • ラジオのザーッというノイズ音
  • 教室で机や荷物を引きずる音
  • 椅子を引く高い金属
  • バイクやトラックが通り過ぎる音
  • キッチンで料理をする音
  • 拍手
  • 電車(特に駅構内&ホームに電車が発着する時の音は最悪だったようです)

では、こうした音は一般的にどれくらいの大きさなのでしょうか。

 

ここには書ききれないほど、普段の生活の音のほとんどが痛みに変わりました。                                                           先ほどの教室の音のデータと比べてみてもかなり過酷な状況であることがお分かりいただけると思います。                                           大人にはただの生活音でも、はるには体がこわばるほどの刺激だったのだと思います。

はるにとっては“痛み”でした

  • 朝のチャイムで肩が跳ねる
  • 拍手の音で頭が割れそうに痛いと泣いたことがある
  • 教室の物音で顔がこわばる
  • 金管部の音で倒れそうになり、実際に学校で倒れたこともありました

その夜、体調を大きく崩し、夜間救急を受診したこともあります。

音のつらさは、気分の問題ではなく、体にも現れることがあるのだと知りました。

 

右耳の聴力がないと言われた日。

はるが「耳が痛い」と言った夜。
私は、その言葉の重さをまだ理解していませんでした。

翌日も様子を見てしまいました。

けれど、症状はおさまらず、耳鼻科を受診することになりました。

いつも通っている病院は休診で、大きな病院も手術日だったため、昔からある地域の病院へ向かいました。

診察室で先生は、こう言いました。

「お母さん。この子の右耳は、もう全く聴力がないよ。」                                                              「これを治すのは時間もかかるし、元に戻すのは難しいかもしれない。」

その言葉は、今も忘れられません。

頭が真っ白になりました。

『ずっと聞こえていたのに、どうして?』

さらに、治療は早い方がよく、遅れるほど回復も難しくなることがあると説明されました。

私は、前日に耳が痛いと言った時点で、すぐに病院へ連れて行くべきだったのではないかと、自分を責めました。

待合室では、はると何か話していたはずなのに、何を話したのか思い出せません。

それほど動揺していたのだと思います。

ただ、帰宅してもどこか違和感が残りました。

医師からは、早期にステロイドの治療を開始しなければならず遅れれば遅れるほど回復は難しくなるとも言われていました。                                  『どうしてこの子ばかりに次から次へと。』焦りと怒りと悲しみが一気に押し寄せていました。

このままではいけない。
そう思い、すぐに大きな病院へ電話をかけました。

それまでに起こったこと。
小学校2年生の時の出来事や心因性視覚障害と診断されたこと。
最近の様子。
学校での出来事。
気になっていたことを、私はすべて紙に書き出して持って行きました。

大きな病院で、私のメモを見た医師は、通常の検査に加えて外耳や内耳の詳しい検査まで丁寧にしてくださいました。

その検査で、突発性難聴ではないことがわかりました。

ただ、数年経過してはいるものの心因性が続いていることなど私は焦りから、別の専門機関にもすぐ相談すべきか尋ねました。

すると先生は、今は、リラックスと安心が重要で、あれもこれもと検査を重ねることは、かえって本人の負担になることもあると話してくださいました。

そして、子どもは強いストレスや人間関係の変化をきっかけに、突然こうした症状が出ることもあること。
特に思春期の女児などお友達との関係の悩みから聴力がなくなり、クラス替えなど環境が変わることで回復していく子もいることを教えてくれました。

当時は苦しむ子供を前に焦りが前に出てしまって、先生の「リラックス」という言葉も半信半疑でした。

けれど今なら、その言葉の意味がわかります。

子どもの体は、ときに心の悲鳴を代わりに引き受けるのだと思います。

右耳の聴力がないと言われた一方で、はるは遠くの話し声や、かなり離れた場所で吠える犬の声がわかるとも言っていました。

私はその時、子どもの「聞こえる」「聞こえない」は、大人が思うほど単純ではないのかもしれないと感じました。

よく高齢の方が、「耳は遠いのに悪口だけは聞こえる」と冗談まじりに話すことがあります。あの不思議さにも、どこか通じるものがあるのかもしれないと、ふと思ったことを覚えています。

数字や検査結果だけでは語れないこともあります。脳や感覚の仕組みには、まだ解明されていないことも多いのでしょう。

だからこそ、日々そばで見ている人の観察が、助けになることもあるのだと思いました。

「早く良くしてあげたい!」「苦痛から解き放ってあげたい!」そういう切実な思いから親は『早く!早く!』と焦るものです。

けれども、子どもの不調は、急いで答えを出そうとするより、まず守りながら見ていく時間も大切なのかもしれないと思いました。

なぜ音で痛くなるのか

聴覚過敏のある子どもは、脳の音のフィルター機能がうまく働かず、必要な音も不要な音も一気に入ってきやすいと言われます。

  • 急な音に強く驚く
  • 雑音で疲れ切る
  • 集中できない
  • 痛みに近い感覚になる

わがままでも、気のせいでもありません。

体からのSOSです。

学校がしてくれた支援

私は合理的配慮の線引きがどこにあるのか、正直よくわかっていませんでした。

あまりに「こうして欲しい」が増えると我儘になるのではないか?という心配もありました。

親が色々と話すことで、はるが学校で逆に気を使うような環境になることも心配でした。

ただ、状況をきちんとお話しし、症状やヘッドホン等の使用など「先生方で情報共有してくださるとありがたいです」というお話は先にしました。

 

けれど学校は、制度の言葉より先に、はるの「安心」を中心に動いてくださいました。

  • 先生方全体への情報共有
  • クラスで苦手な音を共有
  • 椅子や机にテニスボールをつける工夫
  • 校内に音から逃げられる避難場所を用意
  • 本人と一緒に安心できる場所を確認

「つらくなったら逃げていい場所がある」

それだけで、子どもの心はずいぶん違うのだと思います。

子供も家族も辛い時期に本当にありがたい支援をいただきました。

学校には、まず「困りごと」を伝えてみてください

けれど学校は、制度の言葉より先に、はるの「安心」を中心に動いてくださいました。

  • 先生方全体への情報共有
  • クラスで苦手な音を共有
  • 椅子や机にテニスボールをつける工夫
  • 校内に音から逃げられる避難場所を用意
  • 本人と一緒に安心できる場所を確認

「つらくなったら逃げていい場所がある」

それだけで、子どもの心はずいぶん違うのだと思います。

子どもも家族も苦しい時期に、本当にありがたい支援でした。


学校へどう伝えればいいのか迷ったら

私自身、最初はどう話せばいいのかわかりませんでした。

けれど、学校に伝えるときに大切なのは、制度の名前や難しい言葉よりも、今、子どもがどんな様子なのかを事実として伝えること だと思います。

たとえば、

  • 教室の音がつらくて頭痛がする
  • 給食の時間がしんどい
  • 朝になると強く不安が出る
  • 音がすると体が固まってしまう
  • 学校へ行くと症状が強くなる

そんなふうに、家庭で見えている様子をそのまま伝えるだけでも十分です。

先生方も、まずは本人がどんな状態にあるのかを知りたいはずです。
それがわかれば、

「学校ではこんな方法もできますが、どうでしょう」

と一緒に考えてくださることがあります。


支援は、大がかりなことでなくてもいい

特別な設備や大きな変更が必要とは限りません。

ほんの少しの工夫でも、子どもにとっては大きな安心になることがあります。

たとえば、

  • 給食だけ保健室で食べる
  • 数日だけ午前中は保健室や別室で過ごす
  • つらい時に休める場所を決めておく
  • 苦しくなった時は連絡をもらう
  • 安心できる先生を一人決めておく
  • 自宅から(ヘッドホンや耳栓、ふわふわのタオルなど本人が身近にあると)安心できるものを持参する

そんな小さな配慮が、子どもを支えてくれることがあります。


大丈夫です。まず、話してみましょう。

つらいのは本人です。

そして、ひとりで抱え込んでいるのは、親御さんも同じかもしれません。

学校には、助けたいと思っている先生方がいます。
はるも、いろいろな先生に支えられました。

完璧に伝えようとしなくて大丈夫です。
まずは、今起きていることを話してみてください。

家庭で向き合っていたこ── 学校への働きかけと同時進行でしていたこと

現実には、学校で配慮していただくだけで終わりではありません。

痛みや不調を抱える子どもに、どう対応するのか。

登下校はどうするのか。

学校には何をどこまで伝えるのか。

どんな音が辛くて、何をすれば少し楽なのか。

不調が続く子供を前に、考えなくてはならないことも、対応しなければならないことも、たくさんありました。

けれど当時、同じような悩みを持つ子供や親、参考にできる情報は、なかなか見つかりませんでした。

時間ばかりが過ぎ、これで合っているのかわからないまま過ごした日もあります。

さらに、こんなことは常に起こりました、本人が「部活にも行ってみる」と言ったため、その意思を尊重しました。

しかし、頭が痛いと言って泣きながら帰宅し、そのまま体調を崩し夜間救急へ。

今振り返ると、あの時必要だったのは頑張らせることではなく、休ませて守る判断だったのだと思います。

私たち家族も、はる本人も、毎日手探りでした。

ヘッドホン、耳栓、休む場所、声のかけ方。
その時々でできることを探し、試してはまた変えていく日々でした。

だからこそ、もし今、同じように困っている方がいるなら少しでも助けになればと思い、わが家が試した道具や工夫を別の記事にまとめました。

👉 子どもが耳が痛いと言った日──聴覚過敏の我が子を救ったヘッドホン選びの全記録 

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子どもの「耳が痛い」は見えないSOSかもしれません

見た目ではわかりにくい苦しさがあります。

  • 甘えと決めつけない
  • 大げさと思わない
  • 子どもの言葉を信じる
  • 安心できる環境を一緒につくる

そのことが何より大切だと、はるに教えてもらいました。

おわりに

子どもが「耳が痛い」と言ったとき、原因がすぐにわからず不安になる親御さんも多いと思います。

でも、それは怠けでもわがままでもなく、感覚の苦しさかもしれません。

子どもの感じている世界を一緒に理解しようとすること。

それが、何より大きな支えになるのだと思います。

※生活音の目安は、環境省資料などを参考にしています。
※本記事は、現在の医学的知見と専門家の説明、そして私がジェンダーを基盤に多領域を横断して学んできた理解にもとづいています。研究は日々更新されるため、新しい見解が示される可能性があります。

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