我が家の末っ子、はるは、ある時から片耳が聞こえなくなりました。
同時に、音を痛みとして感じてしまう聴覚過敏も始まりました。
聞こえにくい。
けれど、まったく何も聞こえないわけではない。
静かな場所なら会話できる時もある。
体調がよければ、いつもより聞き取りやすい日もある。
一方で、少し大きな音や突然の音には強い痛みを感じ、涙を流す日もありました。
この“わかりにくさ”が、学校生活の中でたくさんの誤解を生みました。
「聞こえるじゃん」
「無視しないでよ」
「都合のいい耳だな」
子どもには、あまりにも重い言葉でした。
今日は、そんなはるを守るために、最初の3か月で家庭と学校が実際にやったことを書こうと思います。
同じように、子どもの聞こえにくさや聴覚過敏で悩んでいるご家庭のヒントになればうれしいです。
聴覚過敏と片耳難聴は、周囲に伝わりにくい
片耳難聴や聴覚過敏は、見た目ではわかりません。
元気に見える日もあります。
普通に話しているように見える時もあります。
そのため、
- さっきは聞こえていたのに
- 今日は返事しない
- ヘッドホンをしている日としていない日がある
- 聞こえないと言うのに話せている
そんなふうに見えてしまい、誤解されやすいのです。
けれど実際には、
- 周囲の雑音
- 教室のざわつき
- 体育館などの反響
- 体調や疲れ
- 音による痛みの強さ
こうした条件で、聞こえ方もつらさも大きく変わります。
本人にしかわからない困りごとでした。
誤解は、一度ではなく日々積み重なっていった
つらかったのは、何か大きな出来事が一度あったからではありません。
小さな誤解が、毎日の中で積み重なっていったことでした。
ヘッドホンをつけていれば、
「なんでヘッドホンするの?」
「カッコつけじゃん」
外している日には、
「つけなくても大丈夫なんじゃん」
聞こえなかった日は、
「無視しないでよ」
少し聞き取れた日には、
「本当は聞こえるんでしょ」
どちらに転んでも傷ついてしまう。
そんな日々でした。
聞こえなくなってから1年半くらい経っていたと思います。
ある日、はるが言いました。
「僕、もう、結構そういうふうに言われるの慣れてるから」
その言葉を聞いた時、胸が苦しくなりました。
子どもが慣れたのではなく、
傷つきながら耐え方を覚えてしまったのだと思いました。
最初の3か月で、家庭と学校がやったこと
誤解を一気になくすことはできませんでした。
だから私たちは、
一つ困りごとが起きたら、一つ共有し、一つ対策する。
そんなやり方で一つ一つ、少しずつ進めました。
1. 学校へ「困りごと」を具体的に伝えた
ただ「大変そうです」と伝えるだけでは、なかなか伝わりません。
そこで、
- 拍手や柏手の音がつらいこと
- 体育館の反響で聞き取りづらいこと
- 急な大きな声で痛みが出ること
- 雑音が多いと会話が難しいこと
など、場面ごとに具体的に共有しました。
すると先生方も、少しずつポイントを理解してくださったように思います。
2. ヘッドホンに「聴覚過敏です」の表示をつけた
はるが学校で使うヘッドホンには、
聴覚過敏です
とわかるシールを貼りました。

さらに、低学年の子にも伝わりやすいように、猫ちゃんが耳をふさいでいるマークを、はる本人と一緒に選びました。
はるは言いました。
「小さい子は悪気がないから、一回一回説明するのが大変なんだよ」
その言葉に、子どもなりの苦労を感じました。
3. 名札やリュックにも工夫をした
学校につけていく名札にも、聴覚過敏のマークを入れました。
普段使うリュックには、
苦手な音があります
と書かれた缶バッジもつけました。
子どもが毎回、自分の困りごとを説明しなくていいように。
それだけで、少し守られる場面が増えました。
4. ヘルプマークにも助けられた
放課後や休日には、ヘルプマークも役立ちました。
ある時、救急隊の方から連絡をいただいたことがあります。
ヘルプマークをつけていたことで状況把握が早く、とても助けられました。

「私なんかが持っていいのかな」と迷う方もいるかもしれません。
けれど、見た目ではわからない困りごとを抱えている人にとって、ヘルプマークは大切な助けになることがあります。
5. 理解されることより、まず生きやすくすること
すべての人に完璧に理解してもらうことは難しいです。
でも、
- 困りごとを共有すること
- 子どもが説明しなくていい環境を作ること
- 大人が先に動くこと
それはできます。
最初の3か月、私たちがやっていたのは、
理解を求めることより、まず生きやすくすること
だったのだと思います。
あの頃のはるへ、今思うこと
はるは今でも、新しい言葉に傷つくことがあります。
それでも、あの頃よりずっと生きやすくなりました。
子どもは強くなったのではなく、
周りの大人と一緒に、傷つきにくい環境を少しずつ作ってきたのだと思います。
もし今、同じように悩んでいるご家庭があれば、伝えたいです。
全部を一度に変えなくて大丈夫です。
一つ困りごとが起きたら、一つ対策する。
その積み重ねが、子どもを守る力になることがあります。
あわせて読みたい
① 耳が聞こえないのに、なぜ聴覚過敏?
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② 子どもが「耳が痛い」と言った日|dBでわかる聴覚過敏の世界
https://358namilab.com/mimi-itai-db/
③ 聴覚過敏の我が子を救ったヘッドホン選びの全記録
https://358namilab.com/child-ear-pain-headphone/
※本記事は、現在の医学的知見と専門家の説明、そして私がジェンダーを基盤に多領域を横断して学んできた理解にもとづいています。研究は日々更新されるため、新しい見解が示される可能性があります。